中村歯科医院 健康の入り口

口から食べられない生活を想像できますか?

2014年7月22日に出版された、長生きは「唾液」で決まる!という本には「口や咽の麻痺のため、自力で食べることができない(摂食機能障害と呼ばれます)ならば、点滴や経鼻経管栄養で生き永らえればよい、という時代がかつてありました。しかし、今はもはや、そういう時代ではありません。現代は、いかに生きるかが重要な時代です」と書かれています。手足のリハビリをするように、口や咽もリハビリをして、もう一回口から食べられるようになってもらうお手伝いをしたい。そういう願いを胸に、摂食嚥下リハビリテーションに取組んでいる著者は、日本大学歯学部摂食機能療法学講座教授の植田耕一郎さんです。口や咽がまひしたら、仮に歯が28本きれいに残っていたとしても、食べ物を噛むことは難しくなり、飲み込んだものは誤って気管に入ってしまう。これは、著者が1990年5月に墨田区にある都心型リハビリテーション専門病院に勤務し始めた頃の歯科界の常識を覆すような、想定外の現実だったそうです。そこで、リハビリテーション科の医師、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、看護師、薬剤師、管理栄養士さん達と協力しながら、こうした歯科の現状を変えようと取組んでいった中で、「口」ストレッチが生まれました。本書で紹介されている「口」ストレッチは、脳卒中の患者さんを対象に、口や咽の機能を回復するリハビリテーションを行う際のトレーニングとして、25年前から実施し、リハビリ関連の専門書で発表されてきたものです。ところが最近は、アンチエイジングという観点から「表情筋トレーニング」「美顔の作り方」「老化予防運動」といった扱いもされているとのことです。口や咽の機能回復と全身の健康状態は密接に関係していますので、今回、一般向けの書籍としては始めて、公開された「口」ストレッチを参考にしてみて下さい。

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粗食に注意

「主食」 「主菜」 「副菜」 「牛乳・乳製品」 「果物」 をバランスよく食べている高齢者はわずか13%という実態が、65~84歳の908人を対象に行った全国農業協同組合中央会(JA全中)の 「高齢者の食事」 調査で浮き彫りになったのは、2011年4月でした。食べる量が減って、必要な栄養が足りない状態の 「低栄養」 をテーマにした記事が新聞に2つ載りました。一つは、「粗食に注意 しっかり食べて」 と題した2014年7月1日の朝日新聞の記事です。東京都健康長寿医療センター研究所の新開省二・研究部長らの調査では、低栄養になっていると、男女とも死亡リスクが、低栄養ではない人と比べて最大1.6倍程度上がったそうです。その理由を新開さんは 「血管の壁がもろくなるタイプの脳梗塞や心筋梗塞が増える。筋肉が減って転びやすくなり、認知機能も下がる」 と説明しています。また名古屋大学の葛谷雅文教授(老年科学)は低栄養がもたらす影響について 「免疫機能が低下し感染症になりやすく、傷はなおりにくくなる。呼吸機能が下がり、疲れやすくなる」 と語っています。葛谷さんによれば、低栄養になる原因には薬の副作用による食欲低下、かむ力やのみ込む力の衰えなどのほかに、太っていないのに 「自分は太っている」 という間違った思い込みがあるそうです。そこで、もう一つの2014年7月18日の毎日新聞の記事で、高齢者の単身世帯や老夫婦の食卓は炭水化物中心に偏りがちになるので、管理栄養士で医学博士の本多京子さんが、魚の缶詰を上手に利用する方法を提案していました。サバ、サンマ、サケの缶詰は、料理へのアレンジがしやすく、抗酸化作用や脳の働きを活発にするEPAやDHAがたっぷり含まれているので、常備しておくと便利だと語っていました。

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