3.見えない部分の治療が大切、そして「時間」こそ材料!
私達歯科医師は 専門的知識・経験・個人の感性を生かし、技術、センスを提供し、患者様の健康に寄与する職業です。ですから「理論のない経験」、「経験のない理論」は ソフトに大きな問題ということになります。お金をかけたらといって それが全て結果にすべて結びつくとは限らないのが歯科治療です。正しいお金のかけ方かどうかです。
時々「そちらではセラミックは一本いくらですか?」と お問い合わせの電話をいただくことがあります。確かに値段は患者様の最大の関心事と思いますが、安くてよい技術もありますし、高くてもそれに伴わない内容も正直見かけます。一本いくらで計れないものです。
最近、「値段が安いので そこへ行って インプラント治療を受けたが 調子がよくない」と患者様がお越しになりました。お話をじっくり聞かせていただくと 申し上げにくいですが、診査、診断、内容に甘さが見られ、最後のかぶせ(上部構造)の適合や咬みあわせまで 時間をかけた治療には思えませんでした。「他より安い」 と 値段だけで飛びつかれたのが 結果的にはマイナスとなった事を後悔されていました。時間をかけず、単価を下げて数をやる。そういう考え方は私は賛同できません。
セラミックを入れることは審美治療として優れた方法です。しかし、ここまで読まれたら もうおわかりでしょうが、セラミックにもいろいろあり、また例えセラミックを選び それを入れられたからといって、よい治療を受けたという結果には直接結びつきません。(セラミックは現在 日本ではまだ90%金属の上にセラミックを焼き付けた、いわゆるメタルボンドといわれるものですが (ちなみに中村歯科医院では今はオールセラミックが大半ですが)一口にセラミックと申しましても、これに使われる金属が ゴールド系の貴金属か ニッケルのような卑金属か それさえ患者様には分かりようがないと思うのです。当然貴金属が望ましい材料ですが、現実 安いニッケル系を使ったセラミックも頻繁に見かけます。医院の考え方が 形として表現されます)。
耐震構造といわれる見えない基礎の部分にどれだけしっかりとした工事がなされているのかと同じことです。見かけは同じように最初は感じても、やがて時間を経て、結果としてはっきり現れます。
丁寧な仕事を行うにはそれなりに「時間」が要ります。必要かつ十分に時間をかけませんと いわば突貫工事になってしまい 結果保証のできるものになりえません。
歯科治療は 必要十分な時間をかけないと きちんとした結果が出せない仕事と断言できます!!
歯科治療においては 「時間」というのは正に「必要な材料」なのです。
お一人に必要な1回の治療時間を60分とするなら 歯科医師一人では 一日では8人の治療が限界になります。患者様も歯科医師も 共に 何を求めるかで 求めるゴールは何かで 予約診療の方針は 異なってくるわけです。もし一日30人の方を治療する場合 お一人は8時間(480分)÷30=16分に、 20人なら24分となります。短い時間の中で十分説明し、ゆっくり痛くないように麻酔したり、丁寧に型採り、きれいな仕上げ、納得いくまで調整など できるのか ということです・・・。
1枚の画用紙に15分で絵を描こうと思えば書けます。でも細やかな描写を目指すなら 1時間もらえる方がよいに決まってます。
今日の歯科医学や 医療器具、歯科材料の進歩、技術の発展に即したものを 制度上の規制や制限のために 十分提供できないというのは、本来の望ましい姿ではないはずです。患者さんの健康のために、きちんとその事実を私達専門家が説明して理解していただく事が大切だと考えています。
いくつかある治療法の選択肢を提供して それぞれのメリット、デメリットを理解していただき、長い人生の視点から、ご自分の健康のために、正しく選んでいただくのが 求められる歯科医療のあり方 と私は認識しています。そのためにも 「時間」 は必要です。
整理してみます。 歯科治療の質を決定する要因として次のものが考えられます。
1.高い診断力 2.高い技術力 3.確実な時間の確保 4.信頼関係の上になされる十分な説明と通じ合う心 5.医院の診療システムがきちんとあること 6.安全への配慮がなされていること 7.CTなど目指す技術の提供に必要な医療機器が整っていること 8.用いる材料は良いものであること 9.経験を踏まえた実績を伴っていること 10.医療スタッフ全員が専門知識をもち、思いやりなど高い人間力を備えていること
そして これからの歯科医療は 大きく 2つ に分かれていく と思われます。
「この国の今後の歯科医療のありかた」 として、赤字1000兆を超えるわが国の財政は 医療に関しましても「待ったなし」のギリギリのところまできているため、保険制度もこのままでは成り立たなく 近い将来 制限、制約が設けられることになる可能性が高いです。
そういう意味で今後は お受けになる治療の内容を 患者様ご自身の選択で行うようになるわけです。
一つ目は 「必要条件医療」「痛い」「ズキズキする」「ぐらつく」などの症状をとりあえず取り除き 虫歯で穴があいたら とりあえず詰めるなど 必要最低限度の治療です。
二つ目は 「十分条件医療」です。生活の質(QOL)を求める医療で、快適で長期間に渡って十分満足できる健康なお口の状態を確保、維持する「健康で快適さを感じる人生」であることを優先するという価値観に基づくものです。
車、旅行、ブランド品などの価値(外向けの価値)もあれば 心のあり方、精神面の強化や体の健康を求める価値(内向けの価値)もあります。 どちらをどう優先されたいか、 あるいは両方手に入れたいと考えられるなど 人によって求める価値が異なるのは当然です。 ご自分がどう捉え どのように ご自身の人生にそれを反映させたいか ということになります。時代は 今までの物質、金銭優先の価値観から 心や健康、家族の幸せなど 内向けの価値を見出していく事を求められている気がします。
この方向は 間違いなく 時間とともに より明確になってくるはずです。
中村歯科医院では 「十分条件の医療」を提供したいと考えています。